長崎教会群の世界遺産登録延期 イコモスが不備指摘 政府推薦見直し(2016年02月08日 |
長崎教会群の世界遺産登録延期 イコモスが不備指摘 政府推薦見直し
西日本新聞2016年2月4日(木)14時17分配信
政府が今年夏の世界文化遺産登録を目指す「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)から不備を指摘されていることが4日、分かった。政府は教会群の推薦をいったん取り下げて構成資産を再検討する方向で調整しており、登録は延期される見通しになった。
2017年は「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)の世界文化遺産登録が控えているため、教会群は18年以降の登録を目指すことになる。
関係者によると、キリスト教関連の世界遺産は既に多く、イコモスから1月中旬にあった中間報告では、長崎の教会群が構成する「伝来」「弾圧」「復活」の内容に疑義を示し、弾圧や禁教の歴史に特化した内容への修正を促してきたという。イコモスが疑義を示したことから、政府は今回の登録は難しいと判断。政府関係者は「今年は取り下げる」と話した。
長崎の教会群は日本最古のキリスト教会の大浦天主堂(長崎市、国宝)や、島原の乱の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)など長崎県と熊本県に点在する14件の資産で構成する。キリスト教の伝来から普及、禁教下での信仰継承、禁教が解けてからの発展まで、4世紀にわたるキリスト教受容の歴史を伝える。
政府は2015年1月、ユネスコ本部に正式な推薦書を提出した。イコモスが2015年9~10月、専門家による現地調査を実施、2016年5月ごろに評価結果をユネスコに勧告し、7月の世界遺産委員会で登録の可否が審査される予定だった。
■「非常に残念」「我慢し待つ」 地元関係者 落胆や不安
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」のユネスコへの推薦を政府がいったん取り下げることで調整していることに、構成資産がある長崎県内の関係者からは驚きや落胆の声が広がった。
市民団体「長崎の教会群を世界遺産にする会」の柿森和年事務局長=五島市=は「登録に向け、市民と喜びを共有しようと考えていただけにショックだ」と声を落とした。ただ「苦難の道を歩んだキリシタンと同じ気持ちで我慢しながら時を待ち、世界遺産になるよう後押ししていきたい」と今後の登録手続きには前向きな姿勢も示した。
以下、毎日新聞です。
長崎教会群、出直し 政府、内容見直し推薦再提出 毎日新聞2月5日
日本が2016年の世界文化遺産登録を目指している「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本県)について、政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦をいったん取り下げて再提出する方針を固めたことが分かった。ユネスコの諮問機関から1月に推薦書の見直しを求められたため。推薦書の再提出が今年の審査に間に合わない場合、2018年以降の登録を目指すことになる。【三木陽介】
文化庁などによると、今年の登録スケジュールはユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が5〜6月ごろ、各国の推薦案件について登録の可否を勧告。これを受けて7月にトルコで開催予定のユネスコ世界遺産委員会で決定する予定。
長崎の教会群は、16〜19世紀のキリスト教伝来と信仰の歴史を示す資産で▽現存する国内最古のキリスト教会で国宝の大浦天主堂(長崎市)▽「島原の乱」の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)▽禁教下に潜伏キリシタンが信仰を守った「天草の崎津集落」(熊本県天草市)−−など14件で構成する。
日本側は「16世紀以来の東西交流の中で生まれた文化的伝統を物語る顕著な物証だ」と普遍的価値を強調していた。しかし、昨年9〜10月に現地調査をしたイコモス側から今年1月下旬、中間報告として「『禁教期』との関わりに重点を置くべきではないか」と見直しを求める趣旨の指摘があったという。
この中間報告は、これまで非公開だったイコモスの審査の透明性を高めるために今年の審査から実施されるようになった。
推薦を取り下げて5月の勧告に再提出が間に合わなかった場合、17年はすでに福岡県の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の推薦が決まっているため、登録は18年以降を目指すことになる。
推薦は各国で年1件。長崎の教会群は2015年の登録が目指されたが、内閣官房が推す「明治日本の産業革命遺産」と競合し「産業革命遺産」が先に推薦されて登録が決まった。長崎の教会群は16年登録を目指し、15年1月に推薦を閣議了解した。